みなさんなら、どうやってこの難しい課題をクリアするだろうか。散り散りになって飛び出して行った中間管理職たちは、すっかり日が暮れるまで一人も帰ってこなかった。そして時計が8時か9時をまわる頃になると、ようやくポツリポツリと戻り始めた。しかし、まともな成果を上げた人はほとんどいなかった。大半は飲まず喰わずの腹ぺこで、くたびれた表情で帰ってきた。最初は、一生懸命知恵を絞って、何とかしようと考えただろう。しかし、そのうちあきらめて、ただ時間を潰しただけで帰ってきた。
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しかも、大企業の管理職の人はほぼ全員がこの組だったという。確かに、すごい課題である。研修の目的は「自分で生きるとはどういうことか?」を体験することだった。そのためには「今までの人生と無縁だったことを体験する」必要がある。そうでないと、「生きる」意味が見えてこない。時間を潰しただけで手ぶらで帰った人は、その精一杯の体験をすることができなかったということになる。やろうと思えば、畑の手伝いを申し出るとか、店番を手伝わせてもらうなど、大した知恵を使わなくても、行動を起こすだけでひとつぐらいは成功したかもしれない。あるいは、悪知恵を働かせて交番におカネを借りに行くぐらいの度胸があれば、少なくとも手ぶらにはならなかっただろう。おカネを持ち帰った人が、手ぶらだった人より管理職として優れているかどうかは分からない。しかし、少なくとも一人の人間としては上だということはできる。