Kさんは三十七歳、建設業界の営業管理職だった。倒産してしまったが、以前勤めていた会社の中ではトップ営業マンとして高い評価をされており、管理職になってからも優秀な成績をおさめてきた。そんなKさんの武器は筆マメなことである。Kさんの会社では、手紙を書くことが励行されており、Kさんはそれを率先して行っていた。年賀状、暑中見舞いを書くのはもちろん毛筆で、初めて会った取引先の相手には面会後に必ず挨拶状を書く。
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何か特別にお世話になった場合には和紙を使い、達筆な礼状をしたためる、と事あるごとに黙勲な手紙を送ることで人脈を太くしていった。ただ、そんなKさんでもこのご時世、なかなか転職の良縁にめぐり会えないのが現在の労働市場である。中高年という程の年齢ではないので最終選考まで残ることはあっても、謙虚なあまり、頼りなげな印象を与えてしまうらしく、他の応募者に競り負けてしまう事が多かった。